元セラピストで筋痛性脳脊髄炎(ME/CFS)の当事者である、横山小寿々(よこやま こすず)さんの本『奇跡を、生きている』を読みました。

筋痛性脳脊髄炎(以下ME)に罹患し診断を受けるまでの苦労や生活の工夫、病気との向き合い方など、参考になることが多かったです。
今までME当事者の本は2冊読みましたが、症状が人によって大きく異なるMEなので、横山さんの本からもたくさんの発見がありました。
では当事者の一人として、『奇跡を、生きている』がどんな本だったのか、感想をまとめます。
*筋痛性脳脊髄炎(ME)・慢性疲労症候群(CFS)は、同じ病気のことを指します。本書では慢性疲労症候群として紹介されていますが、当ブログでは筋痛性脳脊髄炎(ME)の呼び名を使用します。
本の内容を簡単にご紹介
幼少期から体があまり丈夫ではなかったという著者。
病弱な体でも健康に過ごせるようになるため、心身の健康について勉強し、学んで得た知識と経験を人の役に立てたいと、カウンセリングやマッサージ、ヨガの教室などを運営するセラピストとして活躍。
仕事に家事に忙しくしていたある日、筋肉の痛み、高熱が出て、次第に全身の痛みや光過敏まで起こります。
体に良いとされることは全て試しても、悪化の一途を辿る体。寝たきり生活になるほどの重い症状がありながら病院へ行かなければならないため、診断を受けるだけでも大変なこと。
確定診断を受けるまで実に2年。
死を意識するほどに苦しかった著者が、自分の心と体と向き合い、体が動かせなくてもよりよく生きるために見つけたヒントが本書には書かれています。
ME患者の家族や周りの人にとっては、MEがどんな病気かを知るのに役に立ちますし、ME当事者は自分の心と体を大事にするヒントが得られる本です。
ME当事者としてこの本を読んで思ったこと
診断を受けるまで2年…
MEは程度が悪くなるほど病院へ行くことができなくなります。
病院に行く日の何日、何ヶ月も前から体調を整え、やっとの思いで病院に行きます。待ち時間や検査に疲れ果て、一回の通院が終わるとその後何ヶ月も寝込むことも珍しくありません。
横山さんもやっとの思いで病院へ行き、ありとあらゆる検査を受けても、異常は見つからず医師からも「気のせい」「ストレスのせい」などと言われ続け、ご自身で病院を調べる気力すらなくなってしまったとのこと。
すっかり疲れ果て、MEの診断を下せる医師を見つけるのを諦めてしまっていた、という点は私も同じだったので、本当に残念です。コロナ後遺症と関連のあるMEの研究が、後遺症をきっかけに世界中でもっと進むといいなと強く思います。
さて、本書を読んで最も印象に残ったのが、自分自身の心と体との向き合い方。
横山さんは長きに渡り人の心と体を癒してきた元セラピストらしく、物事の捉え方、考え方を工夫するだけで、全身の痛みと激しいだるさで動けない体でも心は自由でいられる方法をシェアされています。
例えば、「自分だけのいい人になる」という項目を少し引用します。
“自分のことが誇らしく思えるような、自分を好きになれるような、そんな自分だけの「いい人」になりたい。(中略) そのためには、自分の思う「いい人」をはっきりさせて、そこに近づくための行動をちょっとずつでも積み重ねるのが大事ではないでしょうか。
・挨拶を丁寧にできる「いい人」
・ゴミをしっかりゴミ箱に捨てられる「いい人」”— 103ページ
自分を嫌う人に好かれようとするより、自分が一生付き合っていく人間、すなわち自分自身にとって「いい人」になれる努力をする。
変えられないものを変えようとするより、変えられるものを変える努力をすることが大切なのだと、改めて思いました。
他にも「毎日(自分を)ハグをする」(94ページ)や「比べる自分は受け流す」(126ページ)は本書を読んだ日から私も毎日の生活の中に取り入れました。
どんな内容かは本書をぜひご覧ください。
MEは症状が人によって大きく異なり、無理すればなんとか働くことができる軽症の人もいれば、寝たきりで自分の身の回りのことですら支援が必要な重症の人もいます。
家庭環境も経済状況も一人一人全て違うので、どちらがよりつらいということではなく、みんなつらいです。
ただ、重症度の違いはあれ、それぞれの患者さんならではの工夫や闘病の知恵があると思うので、こうして本を通してその工夫を知ることができて、嬉しいです。
まとめ
筋痛性脳脊髄炎(ME/CFS)は見た目ではわからない慢性病です。

しかし、全身の痛みや激しい倦怠感、少しの光や音が痛みとなってしまう光・音過敏、そして頭にモヤのかかったように思考力が著しく低下するブレイン・フォグといった症状から、その症状を人に伝える術を持てない患者さんもいます。
こうして当事者の声が本という形で人々に届けられるのはとてもありがたいことです。
本書を多くの人に読んでいただき、筋痛性脳脊髄炎(ME/CFS)という病気が、もっと広く知ってもらえますように。